建築士のワークライフバランス|転職で改善できるポイント
建築業界は「長時間労働が当たり前」というイメージを持つ方も多いでしょう。確かに、建築士は締切やクライアント対応に追われ、ワークライフバランスが崩れがちな職種です。しかし、近年の働き方改革や業界の変化により、ワークライフバランスを重視した働き方は確実に広がっています。
この記事では、建築士のワークライフバランスの実態と、転職によって改善できるポイントを解説します。
この記事でわかること
- 建築士のワークライフバランスの実態データ
- 企業タイプ別の残業時間比較
- 転職でWLBを改善する具体的な方法
- 残業の少ない企業の見分け方
- WLB重視の建築士が選ぶべき転職先
建築士のワークライフバランスの実態
残業時間の現状
建築士の平均残業時間は、企業タイプや時期によって大きく異なります。
| 企業タイプ | 平均残業時間(月) | 繁忙期の残業時間(月) |
|---|---|---|
| アトリエ系設計事務所 | 40〜60時間 | 80時間以上 |
| 小規模設計事務所 | 30〜50時間 | 60〜80時間 |
| 大手組織設計事務所 | 30〜45時間 | 50〜70時間 |
| ゼネコン(設計部門) | 30〜45時間 | 50〜70時間 |
| ゼネコン(施工管理) | 40〜60時間 | 70〜90時間 |
| デベロッパー | 20〜35時間 | 40〜50時間 |
| ハウスメーカー | 25〜40時間 | 40〜60時間 |
| 行政機関 | 10〜25時間 | 20〜40時間 |
(当社調べによる推定値。個人差・企業差が大きいため、あくまで目安です。)
建築業界の働き方改革の現状
2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制(年720時間、月100時間未満)が適用されました。これにより、多くの企業で残業削減の取り組みが本格化しています。
主な変化としては以下の通りです。
- BIM/DXの導入による業務効率化:設計作業の自動化や省力化が進んでいる
- ノー残業デーの設定:週1〜2日の定時退社日を設ける企業が増加
- リモートワークの普及:設計業務を中心に、在宅勤務を認める企業が増加
- 外注の活用:繁忙期のピーク対応として、業務の一部を外部に委託するケースが増加
転職でWLBを改善する5つの方法
方法1:残業の少ない企業タイプを選ぶ
企業タイプによって残業時間には明確な傾向があります。WLBを最優先にする場合、以下の順でおすすめです。
- 行政機関(建築主事など):最も残業が少なく安定。ただし年収は民間より低め
- デベロッパー:発注者側のため、設計事務所やゼネコンより残業が少ない傾向
- 大手組織設計事務所:労務管理が徹底されており、近年は残業削減が進んでいる
- ファシリティマネジメント会社:建物管理がメイン業務で、残業が比較的少ない
方法2:BIM/DXに積極的な企業を選ぶ
BIMやデジタルツールを積極的に活用している企業は、業務の効率化が進んでおり、結果として残業が少ない傾向にあります。面接時に「BIMの導入状況」「DXへの取り組み」を確認することで、企業の業務効率化への姿勢がわかります。
方法3:リモートワーク可能な企業を選ぶ
通勤時間の削減だけでも、WLBは大幅に改善されます。建築業界でもリモートワークを導入する企業が増えており、設計業務であれば週2〜3日の在宅勤務が可能な企業もあります。
| 業務内容 | リモートワークの可能性 |
|---|---|
| 基本設計・意匠設計 | 高い(BIM環境が整っていれば) |
| 実施設計 | 中程度(社内調整が多い場合は出社が必要) |
| 監理業務 | 低い(現場への出向が必要) |
| 確認申請・法規チェック | 高い |
| コンサルティング | 高い |
方法4:フレックスタイム制のある企業を選ぶ
フレックスタイム制を導入している企業では、自分のペースで業務時間を調整できます。朝型の方は早朝から働き、夕方には退社するといった柔軟な働き方が可能です。
方法5:社内体制が整った企業を選ぶ
人員に余裕があり、業務を分担できる体制が整った企業では、一人に過度な負荷がかかりにくく、WLBが保ちやすいです。少人数の事務所では、一人が抜けるとチーム全体に負荷がかかるため、注意が必要です。
残業の少ない企業の見分け方
面接や企業調査で以下のポイントを確認しましょう。
確認すべき5つの指標
| 指標 | 確認方法 | 良い目安 |
|---|---|---|
| 平均残業時間 | 面接で質問、口コミサイト | 月30時間以下 |
| 有給取得率 | 企業の公開データ、エージェント経由 | 70%以上 |
| 離職率 | エージェント経由、口コミサイト | 10%以下 |
| 福利厚生の充実度 | 求人票、企業Webサイト | 社宅・住宅手当、育休実績あり |
| DX投資への姿勢 | 面接で質問、企業ニュース | BIM導入済み、効率化ツール活用 |
面接で使える質問例
- 「繁忙期と閑散期の残業時間はそれぞれどのくらいですか?」
- 「有給休暇の取得率はどのくらいですか?」
- 「リモートワークやフレックスタイム制は導入されていますか?」
- 「BIMなどの業務効率化ツールはどの程度活用されていますか?」
- 「育児と両立しながら働いている社員はいますか?」
WLBと年収のバランスをどう取るか
WLBを改善すると年収が下がるのではないかと心配する方も多いですが、必ずしもトレードオフではありません。
| パターン | WLB | 年収 | 具体例 |
|---|---|---|---|
| WLB重視・年収維持 | ★★★★★ | ★★★★☆ | デベロッパー、大手組織設計事務所 |
| WLB・年収バランス型 | ★★★★☆ | ★★★★☆ | 中堅ゼネコン設計部門 |
| 年収重視・WLBそこそこ | ★★★☆☆ | ★★★★★ | スーパーゼネコン |
| WLB最優先・年収低め | ★★★★★ | ★★★☆☆ | 行政機関 |
WLBを改善しつつ年収を維持するコツ:
- 時間当たりの生産性を上げるスキル(BIMなど)を身につける
- 残業代に依存しない基本給の高い企業を選ぶ
- 管理職ポジションで転職し、裁量で働き方をコントロールする
建築士のWLB改善事例
事例1:設計事務所 → デベロッパーへ転職
- Before: 中規模設計事務所、残業月60時間、年収520万円
- After: 大手デベロッパー、残業月25時間、年収680万円
- 改善ポイント: 発注者側のため、設計事務所のような締切に追われるプレッシャーが減少。年収もアップ。
事例2:アトリエ系事務所 → 大手組織設計事務所へ転職
- Before: アトリエ系設計事務所、残業月70時間、年収380万円
- After: 大手組織設計事務所、残業月35時間、年収550万円
- 改善ポイント: 労務管理が徹底され、チーム体制も整っているため個人への負荷が分散。設計の仕事は継続しつつWLBが大幅に改善。
よくある質問
Q: 建築士でワークライフバランスの良い職場は本当にありますか?
A: はい、あります。特にデベロッパー、行政機関、ファシリティマネジメント会社、大手組織設計事務所では、比較的ワークライフバランスが整っている環境が増えています。企業選びを慎重に行えば、建築士でもWLBの良い働き方は実現可能です。
Q: WLBを重視すると設計の仕事から離れることになりますか?
A: 必ずしもそうではありません。大手組織設計事務所では、労務管理を徹底しつつ設計業務に携われる環境があります。ただし、アトリエ系事務所のような「とことん設計にのめり込む」働き方とWLBの両立は難しい場合もあります。
Q: 残業代がなくなると年収が大幅に下がりませんか?
A: 残業代に依存した年収構成の場合、残業が減ると年収が下がるリスクがあります。転職時は「基本給」と「想定残業時間」を確認し、残業代を含まない年収ベースで比較することが重要です。
Q: 子育て中の建築士でも転職できますか?
A: はい、可能です。近年は育児支援制度が充実した企業が増えており、時短勤務やフレックスタイム制を活用しながら働く建築士も多数います。転職エージェントに育児との両立を前提とした転職希望を伝えることで、適した求人を紹介してもらえます。
Q: フリーランスになればWLBは改善しますか?
A: フリーランスは時間の自由度が高い反面、収入の不安定さや営業活動の負担があります。自己管理能力が高い方にはWLB改善の選択肢となりますが、すべての人に向いているわけではありません。
まとめ
建築士のワークライフバランスは、転職によって大きく改善できます。企業タイプの選択、DX推進企業の選定、リモートワーク可能な環境の選択など、具体的な方法を知っておくことで、WLBと年収のバランスが取れた転職を実現できます。
「建築士だからWLBは諦めるしかない」という時代は終わりつつあります。自分にとって最適な働き方を実現するために、積極的に情報を集め、行動に移しましょう。
この記事の監修:ガウディキャリア(建設業界特化の転職エージェント・有料職業紹介事業 14-ユ-301559)